歯医者さんが教える!歯の神経を抜くケースとは?
2018年05月01日
むし歯を放置しておくと徐々に歯の内側に向かって進行し、冷たいものや甘い物がしみるものです。
定期検診以外で、自分でむし歯に気がつくのはだいたいこの痛みを感じるころではないでしょうか。
痛みを我慢して治療を受けずにいると、徐々に熱いものまでしみたり、何もしなくてもズキズキとした激しい痛みが続くようになります。
こうなってから歯医者さんに行くと、歯の神経をそのまま残しておくのは難しく、神経を抜いて根の治療をすることになると言われる場合が大半です。
神経は歯を維持するために大切なものです。それなのに、なぜ神経を抜いてしまうのかと思われるでしょう。
今回は、その理由についてご紹介します。
歯の神経を抜く理由
普段「歯の神経」と言っているものは、正確には「歯髄」という組織のことです。
歯髄には神経のほかにも血管やリンパ管が含まれていて、歯に栄養を送っています。
そのため、もし歯髄がなくなれば、刺激を感じなくなるというだけではなく、歯の新陳代謝が止まって次第にもろく、黒ずんでいってしまいます。
また、歯の神経を抜く処置は大変むずかしく、とくに歯の根の部分は見えづらいので治療がしにくくなっています。
処置をする歯科医には確実な技術が求められますし、患者さんも長い時間大きく口を開けていなければならないために苦労をかけてしまいます。
それでも、なぜ歯の神経を抜く治療が必要なのでしょうか。
第一に、むし歯が到達し、炎症を起こしてしまった歯髄では、ズキンズキンと脈打つような激痛が続きます。
また、飲食後ジーンとした重たい痛みが歯から顔全体に広がっていくようになります。
第二に、感染した歯髄はその後死んでしまうため保存するのが難しく、放置すると根の先まで感染が広がってあごの骨の中に膿がたまってしまうおそれがあります。
炎症が起こった場所によっては外科的な手術が必要になるケースも考えられます。
神経を抜く処置が難しい場合は、歯を抜くことになってしまうことも少なくありません。
いわば、歯の神経を抜く治療は、自分の歯を守るための“最後の砦”なのです。
進行したむし歯の神経の治療
それでは、歯の神経を抜く治療の具体的な流れを見てみましょう。
1.虫歯の除去
虫歯に侵されていて柔らかくなった歯質を慎重に取り除きます。深い場合は、虫歯が歯髄まで達している状態のため、この時点で歯髄保存不可能の診断となります。
2.歯髄を取り除く
歯の神経の太い部分を取り除いた後、残っている部分を専用の器具を使って歯の根の先までからめ取っていきます。
この処置は非常に重要で、正確さに欠けると後になってから痛みの再発につながってしまいます。
見えづらい場所での細かい作業となるため、マイクロスコープが活躍します。
3.根管清掃・根管充填
根管内の清掃を徹底的に行い感染物質や汚染歯質をしっかり丁寧に取り除きます。
その後、再感染しないように根管充填(歯髄を除去して清掃した部分に最終的な薬を入れる作業)します。
歯の神経が感染している場合、感染した部分を取り去らない限り痛みは取れません。
そのため、歯の神経が入っている根管をよく見ながら神経を抜く治療を進めていきます。
問題は、根管の形状がとても複雑な形をしていることです。
歯の根はまっすぐ伸びているとは限らず、途中で折れ曲がっていたり、根管が枝分かれしていることがあり、非常に複雑です。
また、歯の神経が入っている管は根元に行くほど先細りをしている構造で、肉眼では見えない中の細かい作業が強いられます。
ですから、歯の神経を抜く治療では、マイクロスコープで患部を拡大しながら作業することが有効です。
当院でもマイクロスコープを活用して、緻密な治療を心がけています。
複雑な形をしている根管内で丁寧に処置を進めていく必要があるため、治療を完了させるまでにはかなりの時間が必要です。
根管治療では、1回の治療で1時間以上かかり、何回か通院していただくことになります。
大変に思われるかもしれませんが、自分の大切な歯を残し、むし歯の再感染を防ぐためにはとても大切なことです。
ドックベストセメント治療で神経を抜かずに済む場合も
このように歯の神経に達した大きなむし歯の治療では、神経を抜く必要があるのが一般的です。
しかし、あえてむし歯をすべて除去せずに残しておくことで、神経を抜かずに治療ができる場合もあります。
それが当院でも行っているドックベストセメント治療と呼ばれるものです。
ドックベストセメント治療では、むし歯菌に感染した部分を全て取り除くと神経を抜かなければいけない場合、あえてむし歯の部分を少し残しておきます。
その上で特殊な薬剤で神経を保護しつつ殺菌し、できるだけ神経を温存することを目指します。
セカンドオピニオンの重要性が認識されている今、当院にはなんとか神経を残せないかと相談に訪れる方もいらっしゃいます。
全ての症例で適応できるというわけではありませんが、まずはご相談いただければと思います。
ドックベストセメント治療に関してさらに詳しく知りたい方は、当院のドックベストセメント治療ページをご参照くださいませ。
若林歯科医院 院長 若林潤